訴えによりますと、伊藤時男さん(73)は10代のころに統合失調症と診断され、22歳で地元福島県の精神科病院に入院してまもなく妄想の症状がほとんどなくなったため、退院を繰り返し求めましたが、認められませんでした。
2011年の原発事故の影響で茨城県の病院に転院したあと、61歳で退院しましたが、およそ40年にわたり地域で生きる権利を奪われたと主張し、国に3300万円の賠償を求めています。
一方、国は裁判で「国の施策の結果、長期入院することになったと認められる証拠はない。入院を漫然と続けさせることがないよう、社会復帰や退院などに関する施策を推進してきた」と争っています。
国によりますと、精神科の入院患者は減少傾向ですが、2020年で27万人余りで、その3割は5年以上入院しているということです。
判決を前に伊藤さんは「私以外にも入院が長引き、退院を諦める人が多くいる。裁判をきっかけに、そういう人が社会で生活できるような施策に取り組んでほしい」と話していました。
判決は10月1日午後2時、東京地方裁判所で言い渡されます。